葛飾北斎の木版画作品の一つに《蛸と海女》があります。一般的には春画とされるこの版画は、女性が2匹のタコに捕らわれている様子を描いているんですが……。一度見たら忘れられない異様な光景は、国内外でも高く評価され、「触手」と呼ばれるフェチジャンルの魁となりました。
私たちが「触手」という言葉を耳にすると、多くの場合、タコの足のようなものをイメージするんじゃないでしょうか?もしくは、巨大化した植物が敵を捕らえるために伸ばす根でしょうか?エイリアンがウニューっと伸ばす舌も触手ですかね?
いずれの触手も、現実世界に存在しないものです。学術的な「触手」は、動物の頭や口の周辺から生える突起物のことで、ナマズの髭がこれに当たります。また、クラゲやイソギンチャクなどの刺胞動物は、触手の先端に毒針が付いていて、これを小動物に突き刺して毒を注入して餌とします。こうした触手は小さなもので、人間を絡め取ることは不可能です。つまり、私たちがイメージする「触手」は架空のものなんですね。
とはいえ、「触手」は根強い人気を誇るジャンルであり、さまざまな表現方法で触手を再現する動画が制作されています。今回は、YouTubeで公開されている触手動画を紹介します。
タイトルから判断するに、宇宙空間でのワンシーンを再現したCG動画のようです。1人の女性がロープに捕まっていますが、彼女の足元にはタコの足のような触手が迫って……。彼女は触手を蹴って追い払おうとしますが、蹴っても蹴っても伸びてくる触手は執拗です。彼女は銃で撃ちますが、その銃も触手によって叩き落とされてしまいました。
絶体絶命の彼女に触手が群がります。しかも、ロープが切れてしまい、彼女はもう助かる見込みはありません。触手は人間の手のような形になって、彼女を引きずり込んでいきます。まるで死者の霊が生者に襲いかかっているような不気味な光景が映し出されたところで動画は終了です。
葛飾北斎の《蛸と海女》が、この動画の中で生き残っているようです。世界が注目する日本の文化を私は誇りに思います(笑)