可愛らしい女の子が魔女のような衣装を着てステージに立っています。身振り手振りも交え、堂々とセリフを言っていますが、この後悲劇が起こります。少女が急に嘔吐したのです。口から吐瀉物が勢いよく噴き出します。保護者か先生と思われる女性が女の子のもとへ駆け寄って腕を取ると、女の子は更にゲロッと吐きます。せっかくの発表会が台無しになってしまい、女の子の心にトラウマが刻まれないことを願うばかりです。
この女の子に限らず、緊張すると吐きそうになった経験のある人は少なくないでしょう。緊張によって吐き気を催すのは身体の自然な反応だからです。緊張やストレスが増すと、自律神経の中で臓器や器官などの働きを向上させる役割を担う交感神経系の一部を活性化されます。その結果、身体は「戦うか?逃げるか?」を決めるための対応に向けた準備を始め、消化器系に血液があまり供給されなくなります。このことで胃の活動が抑制されたり、消化液の分泌が増えたりして、吐き気を引き起こします。また、緊張やストレスによって心拍数や呼吸が速くなることで吐き気を催すこともあります。
緊張しても吐き気を催さないようにするには、深呼吸や瞑想など、リラックスして身体と心の緊張を和らげるための方法を普段から実践するとよいでしょう。普段から定期的に適度な運動をしたり、健康的な食事や適度な水分摂取を心掛けたりすることが、胃に不快感をもたらさない上で重要です。健康的な食事とは、脂肪分や刺激物質を控えた、消化しやすく、胃に優しい食事のことです。また、緊張することがわかっているなら、その前に過度な空腹や満腹を避けることでも対処できます。
一方、吐き気を催すことが続き、それが緊張や不安をもたらしている場合は、医師や心理カウンセラーといった専門家に相談するのが一番です。医師によっては、抗ヒスタミン薬やセロトニン受容体拮抗薬、胃酸分泌抑制薬などを処方してくれるので、これらを指示に従って服用することで、吐き気を抑えることもできるでしょう。
もっとも、万全の準備をしていても吐いてしまうことはあります。子供たちの間では、吐いてしまった子供をバカにしたりいじめたりする事態が発生することもあります。吐いた本人が気にしなくても周囲からの嫌がらせが続く場合も考えられます。その際は、大人が子供をきちんと守ることが必要です。吐いてしまったこと自体に傷付いた子供を更に傷つけることを許さないという毅然とした態度を示すことが大人には求められます。