ウサギやキツネの毛皮は「リアルファー」と呼ばれ、高級感やゴージャス感あふれる素材として、コートなどの衣服に利用されてきました。しかし近年、動物愛護が世界的な流れになりつつあり、毛皮はファッションの世界から追放されようとしています。大手高級ブランドのアルマーニが2016年に「脱毛皮」を宣言したのを皮切りに、グッチやバーバリーなども「脱毛皮」へと舵を切りました。
動物から毛皮をはぎ取る現場を映した動画や写真がSNSなどで拡散されたことで、毛皮に対して生理的嫌悪感を催す人たちが増えたのが「脱毛皮」ブームへ拍車をかけました。それだけでなく、化学繊維を利用してリアルファーそっくりの「フェイクファー」を製造する技術が進歩し、従来の毛皮に頼る必要が無くなったことも大きいでしょう。フェイクファーは今や「エコファー」と呼ばれ、アニマルライツ(動物の権利)を守る救世主として注目を集めています。
こうした動きに加えて、「毛皮=高級」というイメージの崩壊もあるように思います。かつては、毛皮をまとった貴婦人がお金持ちの象徴のように考えられましたが、今どき毛皮モコモコの格好で街中を歩いたら……。「流行は繰り返す」といわれますので、何年か後にまた毛皮が流行るかもしれません。しかし、バブル崩壊から右肩下がりの日本においては、少なくとも再び毛皮が流行することはなさそうです。
ファッション界で絶滅の危機に瀕している毛皮ですが、フェチ界隈では現在も根強い人気を誇っています。毛皮をまとった女性、もしくは毛皮そのものへの強い執着は、流行に関係なく存在するんですね。特に後者は、毛皮のふさふさした手触りやモコっとした外観といった素材に対する執着なので、フェイクファーでは代用できるものではありません。そんな毛皮フェチが歓喜しそうな動画を紹介します。
毛皮のコートをまとった美女が、ファッションショーのように、自らの衣装を披露します。カメラに向かって歩いてきてクルリと周り、全身を覆うモフモフのコートを見せてくれました。その後フードを被ってクルクル回るわけですが、まるでイヌイットのような姿です。非日常的な雰囲気を漂わせるところにコートの魅力があります。
彼女が後ろを向いてコートをバッと広げると、動物の体毛特有の模様が画面全体に大きく映ります。茶色とクリーム色がバランスよく配置されていて、人工的ではない“美”があります。リアルファー特有の肌触りや柔らかさも、動画を通して伝わってきます。猫や犬を愛撫するときのあの安心感……。触ったらきっと気持ちいいんでしょうね。
毛皮の魅力を改めて実感させられる動画でした。「毛皮のコートなんて、バブル気分が抜けない成金ババアが着るもんでしょ?」という罵詈雑言が聞こえてきそうですが、それでも、好きな人にとってはたまらない衣装なんですよ。動物愛護の風潮とイメージの変遷によって毛皮が消えていくことを私は残念に思います。