2017年10月5日、ニューヨーク・タイムズが映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインによるセクハラを告発しました。このことがきっかけで、SNSで「#MeToo」のハッシュタグをつけてセクハラを告発する「MeToo運動」が世界中でブームとなりました。
MeToo運動では、数多くの著名人が声を上げました。ワインスタインを告発したのは、ハリウッド女優のアシュレイ・ジャッドやローズ・マッゴーワンなどでした。その後、俳優のケビン・スペイシーがアンソニー・ラップから告発されたり、コメディアンのルイ・C・Kが5人の女性から告発されたりしました。また、数多くの著名人がセクハラ疑惑で解雇される事態になりました。
そもそもセクハラの根本原因は、女性の人権が軽んじられる男性中心社会そのものであるという批判もあります。男性中心社会では、男性が女性に不快な言動を繰り返しても、被害者の女性はそれらを甘んじて受け入れなければならない、という暗黙の了解があるからです。
特に映画業界では、男女差別を訴える声がMeToo運動以前からありました。ニュージーランド出身の監督・脚本家、 ジェーン・カンピオンさんは、2014年に開催された第67回カンヌ国際映画祭で審査員長を務めた際、女性監督の少なさを映画業界の男女差別と結び付けて批判しました。
こうした問題意識から制作された動画がYouTubeで公開されています。それが「Woman In Gold」です。
動画にはバスタブが映っています。バスタブの中には、金粉を溶かした水が満ちています。水面に波紋が広がり、人間の脚が浮かび上がってきます。その脚は金色です。次に顔が浮かび上がり、バスタブの縁を手が握り、全身が金粉まみれの女性が上半身を起こしました。彼女はバスタブから抜け出して、外の世界へと足を踏み出すのでした。
この動画には、映画業界が男女平等になってほしいという願いが込められています。金粉まみれの女性は、アメリカで開催される「アカデミー賞」のオスカー像の相方である“スカーレット像”だといいます。
権威あるアカデミー賞で男性の像が授与されること自体、映画業界の男性優位を象徴しているととらえられます。だからこそ、女性であるスカーレットの像を誕生させ、男女平等への道を切り開きたいというのが、動画に込められたメッセージなのでしょう。
金色の輝く女性像が、MeToo運動などで揺れる映画業界には必要なのかもしれません。