日本では、昆虫食というと、どうしても「ゲテモノ食い」として語られがちです。日本人は虫を食べ慣れていないため、その見た目が「気持ち悪い」「不味そう」というイメージにつながってしまうんですね。
とはいえ、日本国内にも、昆虫食が食文化として根付いている地域があります。たとえば、長野県では、カイコのさなぎがご当地グルメになっています。
カイコの幼虫は桑をエサとして成長し、絹製の繭を作ってさなぎになります。この繭は、製糸工場で蒸気によって乾燥させられて絹糸の原料とされます。羽化する前にカイコが気の毒といえば気の毒です。しかし、カイコは、羽化したとしても、自らエサを食べることすらできないため、かなり短命です。人間によって家畜化された生物の中では、最も悲劇的な生物といえるでしょう。
そんなカイコの繭から副産物として生じるさなぎの死骸――。豚や鶏のエサにされたり、釣り得に利用されたり、肥料として畑に撒かれたりしてきました。しかし、太平洋戦争中の食糧難の時期、長野県内の製糸工場で従業員の副食とされたといいます。魚肉類が入手困難であるため、カイコのさなぎが貴重なタンパク源とされたんですね。長野県では現在でも「蚕のさなぎ」が佃煮としてスーパーで販売されていて、Amazonでも購入できるので、興味のある人は食べてみると良いでしょう。
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カイコをはじめとした蛾のさなぎは、宇宙食としても注目を集めています。タンパク質が豊富で、飼育も容易なことから、宇宙ステーションでの食糧にはもってこいなんだとか。世界的にも評価の高いさなぎですが、その食べ方をYouTubeに公開されている動画から学んでみましょう。
素足、Tシャツ、短パンという格好をした美少女が、森の中で、木や草の枝にぶら下がっているものをむしり取っていきます。パッと見、木の実のようですが、少女が集めているのは、実はさなぎなんですよ。ザルの中にたくさん集められたさなぎは、繭を剥かれて茶色くて丸い中身が取り出され、加熱した油の中に放り込まれます。熱を感じて流石に耐えられないのか、さなぎがもぞもぞ動きますが、どうやっても逃げられません。成虫になる前に少女につかまってしまった不運を嘆くしかないでしょう。
炒められたさなぎはナッツみたいな見た目で、それほどグロテスクでもありません。むしろ、美味しそうにすら見えます。大きな葉っぱの上に載せられたさなぎたちですが、この後、味付けが始まります。少女は、唐辛子と調味料や何かの果実をすり潰して混ぜ合わせたものを作り、それをさなぎにかけます。そして、さなぎを手づかみで口に放り込みムシャムシャ……。これが野生ってものでしょう。
実際、食べ物が容易に手に入らない状況になったら、この少女のように、食べられるものを探して調理するしかありません。そんなときに「気持ち悪い」「不味そう」などとは言っていられないんですよ。というか、個人的には、貝やキノコの方がよほど気持ち悪くて不味そうですが、そんなのでも食材にできる人類が昆虫食を忌避する意味がよくわかりません。今回の動画を見て、いざというときには、そこら辺を這い回っている虫を食べなければならないということを理解しておくべきでしょう。