世の中には、身長の高い人たちがいます。一方、ビルをも凌駕するほどの高身長になると、それはもう「巨人」です。巨人の中でも性別が女性の場合、「ジャイアンティス(giantess)」といい、略称は「GTS」です。
GTSというと、特撮ヒーロー作品にしばしば登場します。有名どころでいえば、『ウルトラマン』に登場した巨大フジ隊員が挙げられます。 科学特捜隊の紅一点、フジアキコ隊員がメフィラス星人によって巨大化させられ、人間としての理性を奪われて街を破壊するという設定です。巨大フジ隊員を警官が銃撃しようとします。科学特捜隊は「撃たないでください!怪獣じゃないんですから!」とかばい、その後、ビルの屋上で巨大フジ隊員に呼びかけるという展開に……。ビルの屋上とフジ隊員の巨大な顔という不思議な組み合わせが衝撃的だったのを覚えています。
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巨大フジ隊員はウルトラ怪獣図鑑にも掲載されるほどのインパクトがあり、その後、多くの人々に影響を与えました。前衛芸術家の会田誠は《巨大フジ隊員VSキングギドラ》(1993)を描きました。会田誠のような有名アーティスト以外にも、GTSに魅入られて独特の拘りを映像作品などにしていった人がいます。今回紹介するYouTube動画もそんな作品の一つでしょう。
映像には、2人の巨大なチアリーダーが街中を闊歩する姿が映っています。赤いコスチュームに来た2人が歩くたび、道路に足がめり込んで、メキメキッと音が響き渡ります。道路が陥没することで電柱が倒れ、車が地面に吸い込まれ、街はボロボロになっていきます。
撮影者は「チープな特撮部屋」を名乗っていることもあり、意図的に壊れやすいセットを使って、チアリーダーたちの足が街を踏み壊すシーンを撮っています。時々カメラのアングルが変わって、セットの下の空洞部分も映し出すあたり、本物らしさを追及する特撮とは違った魅力があります。
この作品の見どころは、巨人娘の足が街を蹂躙するクラッシュであり、そこにドラマを求めているわけではないんですよね。足を重点的に移していることからも、カメラを回す撮影者の拘りがひしひしと伝わってきます。最近の特撮はCGを使っていてリアルですが、そうした映像とは一線を画した作品です。バリッメキッという崩壊音と一緒に撮影者の息遣いも聞こえてきそうですね。