多くの小中学校では、校舎や体育館の中で生活する際は上履き(スクールシューズ)を履くことが義務になっています。日本の文化は屋内で土足禁止なので、上履きの習慣があるんですね。
上履きというと、爪先が赤や青などのカラーゴムで覆われていて、足の甲に当たる部分にゴムテープがあるタイプが一般的です。この独特な形をした上履きはバレーシューズがもとになっています。履いたり脱いだりが楽で、通気性が良いため、このタイプの上履きが普及したといわれます。

上履きは、避難訓練などの特殊な状況以外では、学校の外で履くことを禁止されています。また、独特の形状なので、他の靴と並べると目立ちます。だから、上履きを履いたまま学校の外を歩くことになったら、ドキドキしてしまいます。
私も小学生の頃、学校から上履きのまま帰ってしまったことがあります。通学路の真ん中まで来てしまってから、自分が上履きを履いていることに気づいたんですよ。今さら引き返すわけにもいかないし、かといって、上履きで校舎の外に出るのは禁止されているのに、どうしよう……。そんな焦りがありましたが、結局、上履きのまま家に帰ることにしました。途中でクラスメイトや知り合いに会わないことを祈りながら……。あのときは本当にドキドキしました。
そんなドキドキ感が伝わってくるのが、今回紹介する動画です。赤いカラーゴムが見えるので、女子用の上履きと考えられます。黒いハイソックスを履いているので、撮影者が男性なのか女性なのかははっきりしませんが、おそらく男性でしょう。上履きをコレクションしている人なのかもしれません。
上履きを履いた撮影者は、ただ黙々とマンションの廊下を歩きます。薄暗い廊下を前進する上履き――。このこと自体に何か問題があるわけではありません。しかし、もしマンションの住人と出会ったら……。住人は何事もなかったかのように会釈してその場を立ち去る可能性が高いですね。撮影者の足元を注意して見ない限り、住人は撮影者が上履きを履いていることに全く気付かないでしょう。
一方、住人が撮影者の足元を見て違和感を覚えたらどうでしょうか?撮影者は自らの趣味嗜好を知られてしまいます。“変な人”のレッテルを貼られ、マンション内で噂をまき散らされるかもしれません。マンションという狭いコミュニティーでそんなことをされたら、撮影者は住み続けるのが辛くなるはずです。
大人が上履きを履いてマンションの廊下を歩くのは、リスクが高い行為なんですよ。だからこそ、撮影者はこのドキドキ感を記録したくて、動画を撮っているのでしょう。薄暗い廊下を歩き、明るい廊下に出て、さらに階段を降り……。一歩一歩から撮影者の息遣いが伝わってきます。