英国の人気ロックバンド「ビートルズ」のジョン・レノンと結婚したことで世界的な注目を集めたオノ・ヨーコは、前衛芸術家であり、平和活動やフェミニスト運動にも積極的に参加する活動家です。そして、オノの有名な作品に《カット・ピース》(1964)があります。
《カット・ピース》は、ステージに上がったオノの衣服を、観客がハサミで切っていくというパフォーマンスです。女性の衣服を切り取るというショッキングな光景は、世界的にも賛否両論を巻き起こし、オノを一躍有名にしました。作品の解釈はさまざまですが、男性社会が女性を搾取していることを暗示しているというフェミニスト的な解釈が一般的なようです。
オノは、衣服を着られている間、平静を装っています。しかし、途中でどうしても耐えられなくなり、両手で胸を隠し、そこで映像は終了しています。いくらアートとはいえ、オノは、自らの内から沸き起こる羞恥心との戦いには勝てなかったのでしょう。そうでなければ、胸を隠す演出も作品の一部だったのかもしれません。いずれにしても、パフォーマンスが世界に与えた“衝撃”は非常に大きなものでした。
そんな《カット・ピース》を彷彿とさせる動画がYouTubeで公開されています。
動画に映っているのは、ハサミを持った一人の男性とマスクを被った一人の女性です。男性は、女性のパーカーの袖にハサミを入れて、容赦なく切っていきます。そして、その衣服の裂け目を両手で握って、思いっきり引っ張りました。布地が裂けていくのが見えますが、残念ながら、音は聞こえません。パーカーがボロ布と化して、中に着ている紺色パーカーが露わになりました。
続いて、紺色パーカーを背後の裾から切っていく男性――。パーカーは、背中部分を切り裂かれ、ベロンと無様な見た目になってしまいました。男性は前身頃も袖も切り裂いていって、パーカーをはぎ取りました。そして、今度は花柄のワンピースがスカート部分からジョキジョキ……。どんどん切り裂かれて穴だらけになった衣服は、まるでゴミのようにはぎ取られて、床に投げ捨てられます。
動画の中盤以降は、衣装替えしてまた切り裂きが始まります。こちらは音が入っているので、布地をハサミが裁断したり、手が引き裂いたりするときの音が聞こえて臨場感があります。パーカーが切り裂かれて、フード部分だけ残った状態で女性の体にまとわりついています。それもハサミで切り取られて、床にポイッとされるんですね。
現代の《カット・ピース》ともいうべき動画を見て、いろいろ考えさせられるものがありました。女性の衣服をハサミで切り裂くことは、世界を変える原動力にもなるのかもしれません。