生身の人間はわがままだし、食費がかかりますし、劣化もします。しかし、人形はどんな扱いをされようとも不平不満を言いませんし、何も食べません。管理さえきちんとしていれば、人間のように年老いていくこともなく、永遠の美しさを保ち続けます。
そんな人形を偏愛し、生活を共にすることに喜びを感じる人々がいます。日本では「ピグマリオンコンプレックス」と呼ばれるある種のパラフィリアです。ピグマリオンとは、ギリシャ神話に登場するキュプロスの王で、自らが掘った象牙の人形であるガラテアに恋をしてしまいます。ガラテアと生活を共にし、ガラテアが人間になることを望むピグマリオンの願いは、女神アプロディーテーによって叶えられるという展開です。
実際に人形が人間になることはありません。ピグマリオンコンプレックスの人の中には、人形を人間の代替と考えるのではなく、人形だから愛せるという嗜好もあるでしょう。そのため、ギリシャ神話のように、人形が人間になってしまったら逆に困るんじゃないでしょうか?
さて、今回紹介するYouTube動画は、ピグマリオンコンプレックス重症者が撮影したものです。
ピンクのセーラー服を着た美少女人形がベッドの上に座っています。その人形に接近して、体や顔をアップで撮影していく撮影者――。フリルの付いた白ソックスを履いた足、ピンクの制服スカート、大きなリボンがキュートな上着、そしてあどけない顔…。黒目がちな瞳で虚空を眺めている人形は、妄想の世界を楽しんでいる本当の少女のようなリアルさです。
撮影者は、執拗に人形を撮影し続けますが、そこには人形に対する尋常ならざる愛情を感じます。きっとこの人形を恋人のように、もしくは家族のように愛おしく思っているのでしょう。そんな撮影者の情熱を知ってか知らずか、人形はいつまでも遠くを見ているのでした。