不要になった人形の処分に困ってしまう人たちは少なくありません。ぬいぐるみとは違って人間の形をしているものなので、ゴミ袋に詰めて燃えるゴミとして捨てるのに抵抗があるからです。また、人形には魂がこもっているので、雑に扱うと呪われると信じている人もいるかもしれません。特に雛人形や五月人形といった、年間行事で使う人形だと、なおさら処分しにくいでしょう。
そんな人形たちを集めてお焚き上げ(儀式を行った後に火をつけて燃やす)するのが「人形供養」です。日本には昔から、万物に魂が宿るというアニミズム振興があり、古くなったものでも心を込めて処分していました。その処分形態の一つに「~供養」があります。人形供養だけでなく針供養や眼鏡供養などもあって、伝統的な日本人の“心”が現代にも受け継がれています。
全国の神社やお寺で定期的に人形供養が行われています。人形を捨てられない人は、人形供養を利用して、不要な人形とお別れするといいでしょう。それなりのお金はかかりますが、後々不快な思いを抱えてしまうよりはマシです。
今回紹介するのは、和歌山県田辺市古尾にある八立稲神社(やたちねじんじゃ)で2013年に行われた「人形焼納供養」の様子を映した動画です。
八立稲神社では、毎年2月3日の節分祭の前に人形焼納供養が行われます。1年間を通して納められた雛人形や五月人形、御札などが供養の対象です。人形焼納供養が始まったのは昭和30年頃のこと。神社の裏山に人形がたくさん捨てられていたため、それらを集めてお焚き上げしたといいます。現在では、市内だけでなく、周辺の市町村からも人形が持ち込まれるようになりました。
動画では、人々が見守る中、粛々と人形供養が行われます。神主さんが祝詞をあげた後、たくさん並べられた雛人形などの人形たちは米と塩、水で清められます。そして、いよいよ人形たちに火をつけます。何か所かある着火ポイントに木の棒で火をつけるおじいさん。神主さんの祝詞が続く中、火が燃え広がり、人形たちを飲み込んでいきます。
炎上する人形たち――。真っ赤な炎はまるで地獄の業火のようで、美しかった人形たちは黒く焼け焦げていきます。表情を一切変えない人形たちは、どのような気持ちで焼かれているのでしょうか?
黙々と黒煙が立ち上っています。この煙に乗って、人形たちに宿っていた魂も天に昇っていくのでしょう。火が消えた後は、灰色の残骸が一面に広がっているのでした。
人形供養に関心を示す外国人もいるようです。コメント欄には、「私は人形を愛しています。人形を燃やさないでほしかったです。私が引き取れればよかったのですが」という英語の書き込みがあります。人形供養の動画を見て何を感じるかは人それぞれです(笑)